星降る丘から健康便り

泌尿器科部長 百瀬均院長 大山信雄先生

星ヶ丘厚生年金病院 
枚方市星ヶ丘4-8-1 TEL072-840-2641




泌尿器科救急 夜間・休日救急診療 開設中
 平成24年4月1日号
前立腺がん8
 平成24年3月1日号
前立腺がん7  平成24年2月1日号

前立腺がん6  平成23年12月1日号
前立腺がん5  平成23年11月1日号
前立腺がん4  平成23年10月1日号
前立腺がん3  平成23年9月1日号
前立腺がん2  平成23年8月1日15日合併号
前立腺がん1  平成23年7月1日号
性感染症STD 4 HIV感染症  平成23年6月1日号
性感染症STD 3 淋菌感染症  平成23年5月1・15日合併号
性感染症STD 2 クラミジア感染症  平成23年4月1日号
性感染症STD 1  平成23年3月1日号
慢性腎臓病CKD 7  平成23年2月1日号
慢性腎臓病CKD 6  平成23年1月1・15日合併号

慢性腎臓病CKD 5  平成22年12月1日号
慢性腎臓病CKD 4  平成22年11月1日号
慢性腎臓病CKD 3  平成22年10月1日号
慢性腎臓病CKD 2  平成22年9月1日号
慢性腎臓病CKD 1 平成22年8月1日15日合併号
副腎の病気4ークッシング症候群ー 平成22年7月1日号
副腎の病気3ー原発性アルドステロン症ー 平成22年6月1日号
副腎の病気2ー褐色細胞腫ー 平成22年5月1日号
副腎の病気1 平成22年4月1日号
腎がんと鑑別を要する病気2 腎盂(じんう)がん 平成22年3月1日号
腎がんと鑑別を要する病気2 AML 平成22年2月1日号
腎がんと鑑別を要する病気1 腎嚢胞(じんのうほう)  平成22年1月1日15日合併号

腎臓について3 平成21年12月1日号
腎臓について2 平成21年11月1日号
腎臓について1 平成21年10月1日号
心と膀胱のはなし3 平成21年9月1日号
心と膀胱のはなし2 平成21年7月1日号
心と膀胱のはなし1 平成21年6月1日号
過活動膀胱について4 平成21年5月1日号
過活動膀胱について3 平成21年4月1日号
過活動膀胱について2 平成21年3月1日号
過活動膀胱について1
 平成21年2月1日号
尿閉について 3
 平成21年1月1日15日合併号

尿閉について 2 平成20年12月1日号
尿閉について 1 平成20年11月1日号
「ピンポン玉」となすび4 平成20年10月1日号
「ピンポン玉」となすび3
 平成20年9月1日号
「ピンポン玉」となすび2
 平成20年7月1日号
「ピンポン玉」となすび1
 平成20年6月1日号
泌尿器科 電話無料相談
 平成20年5月1日号
夜尿症(おねしょ)その5
 平成20年4月1日号
夜尿症(おねしょ)その4
 平成20年3月1日号
夜尿症(おねしょ)その3
 平成20年2月1日号

夜尿症(おねしょ)その2
 平成19年12月1日号
夜尿症(おねしょ)その1 平成19年11月1日号
尿路結石その3
 平成19年10月1日号
尿路結石その2
 平成19年9月1日号
尿路結石その1 平成19年8月1日号
夜間頻尿その6
 平成19年7月1日号
夜間頻尿その5 平成19年6月1日号
夜間頻尿その4
 平成19年5月1日号
夜間頻尿その3
 平成19年4月1日号
夜間頻尿その2 平成19年3月1日号
夜間頻尿その1
 平成19年2月1日号
泌尿器系の疾患を紹介 平成19年1月1日号

 


 

泌尿器科救急 夜間・休日救急診療 開設中
 
  皆さんにはあまりなじみがないかも知れませんが、星ヶ丘厚生年金病院では平成20年より「夜間・休日泌尿器科救急診療」というものを開設しています。残念ながら今のところ24時間365日診療という訳ではありませんが、基本的には泌尿器科の病気やけがには何でも対応しており、近隣市町村の救急隊とも連絡を取り合っていますので泌尿器科疾患が疑われる患者さんについては搬送要請が来ます。
 現在は月曜日、水曜日および隔週の金曜日の夜間と、土曜日の朝から日曜日の朝の時間帯は、泌尿器科医が必ず当直しています。ただし、休日診療所のように軽症の患者さんも診るわけではなく、あくまで急を要する患者さんを対象としていますのでお間違えのないようお願い致します。
 内科や整形外科と比べると、決して頻度的に多いとは言えませんが、泌尿器科にも救急疾患、つまり緊急性の高い病気で、急いで専門的処置を行う必要がある病気がいくつもあります。例えば尿管結石による激痛や急な血尿、あるいは排尿に関わる病気などで搬送される患者さんが多くおられます。
 次回からは泌尿器科が扱う救急疾患についてご紹介しようと思います。


前立腺がん8 待機療法について
 
 前立腺がんの治療について最後に「待機療法」のお話をします。これは一定の条件を満たす患者さんに対し、何も治療を行わずに経過をみていくというものです。具体的には、がんと診断されてから定期的に前立腺がんマーカーであるPSA値を測定し、その値の上昇する速さを監視していくことから、PSA監視療法とも呼ばれています。
 と、書いてしまうと、いかにも楽な治療法だとか、「本当に何もしないで大丈夫?がんが進行するんじゃないの?」とか思われてしまいそうですね。しかし実は、治療のタイミングを見極めているだけで、その間は治療を受けることによるマイナス面を回避できるとういう利点がありますが、少しでも進行のサインがあれば、その時点で積極的に手術や放射線療法といった治療に踏み切ることになります。
 この治療法を選択できる患者さんの条件については、簡単に言うと診断時のPSA値が低いこと、がんの進行度が早期であること、そして一番重要なことは、採取されたがん組織の悪性度が低いことです。
 ただし、治療を受けないでいる不安が大きい患者さんもいるでしょうし、経過観察中にがんが進行してしまう可能性がゼロではありませんので、しっかりと適応を判断する必要があります。


前立腺がん7 薬物療法について
 
 前立腺がんの薬物療法の主体はいわゆる抗がん剤ではなく、内分泌治療と呼ばれるものです。前立腺がん細胞はテストステロンというホルモンの一つにより活動が活発になることが分かっています。そこで以前は去勢術といって、精巣(睾丸)を摘出することでテストステロンを下げる手術を行っていました。今もこの手術は行う場合がありますが、大抵は注射によりテストステロンを下げる治療が行われます。
 方法はテストステロンの分泌をストップさせる作用を持つ薬を1か月または3か月に1度注射しますが、実はこの注射だけではテストステロンを100%なくすことはできません。なので多くの場合、テストステロンの作用を阻害する内服薬を併用することで限りなくその値を0に近付けるようにします。ただ、内分泌治療はほとんどの場合、がんの根治が目的ではなく、がんを小さくしたり、手術や放射線治療の効果を高めるために行われるということを知っておいてください。
 主な副作用としては性欲減退、勃起障害といった男性機能の低下や、ほてり、発汗、うつ、乳房の女性化(乳首の痛みを訴える方もいます)、骨粗鬆症などがあります。費用的にも少し高額となるため、経済的な面についても十分考えて行う必要があります。


前立腺がん6 放射線療法について
 
 今回は前立腺がんの治療法の一つである放射線療法についてです。対象となる患者さんは手術と同様、主に転移のない、がんが前立腺に限局した方と考えてください。
 放射線治療の方法にはいくつかの種類があり、施設により異なります。その一つは体の外側から前立腺に焦点を合わせて放射線を照射する方法で、「外照射」と呼んでいます。いま一つの方法は、放射線を一定期間出すように作られた針を、前立腺の内部に埋め込んで中から照射する「小線源治療」と呼ばれるものです。ただし、一口に外照射と言っても放射線の種類や照射する機械により、いくつもの種類があったり、中には先進医療の適用となっていて、一般の健康保険が使えないものがあったり、またさらには外照射と小線源治療を併用する場合もあり、その方法は様々です。結局は患者さん個人個人に合った方法を担当医と相談し選択することになります。
 放射線治療の利点は基本的には通院で行えたり、入院が必要な場合でもごく短期間で済む場合が多いということと、手術よりも治療後の尿失禁や勃起不全の割合が少ないことなどです。
 合併症については治療法によりその種類や頻度が変わってきますので、担当医の説明を十分に聞いた上で選択することが重要です。


前立腺がん5 手術療法について
 
 今月からは前立腺がんの治療法についてお話します。前立腺がんの治療法は大きく分けて4つあり、1.手術療法 2.放射線療法 3.薬物療法 4.経過観察となります。その中で今回は手術療法についてお話ししたいと思います。
 手術の目的は根治的切除つまり前立腺を残さずに摘出するということです。その方法としては、へその下を10〜15cm切開する開腹手術が一般的ですが、一部の施設ではさらに小さな切開での手術も行われています。いずれにしても骨盤の奥にある前立腺を摘出した後、膀胱という尿をためる臓器と尿の通り道である尿道をつなぎ合わせる方法です。 この治療法の欠点としては術後の合併症である尿失禁や勃起障害の割合が、そのほかの治療法に比べて若干、高率になることと、2週間程度の入院が必要ということですが、前立腺をすべて摘出するわけですから根治性、つまりがん細胞を残さないという点では最も可能性が高く理にかなった方法で、当病院でも毎年40人ほどの患者さんがこの手術を受けておられます。ただし、あまり高齢の方や、ほかに大きな病気をお持ちの方は手術の適応から外れる場合がありますし、がんの進行度によっては、手術以外の方法を選択する場合もあります。


前立腺がん4
 
 前回は前立腺がんの診断についてお話しました。確定診断のためには前立腺の組織を採取する針生検という方法が一般的と書きましたが、この結果が陰性、つまり針生検によってがんが検出されなかった場合はどのように考えれば良いのでしょうか?
 がんが検出されていないわけですから、一応は安心していただいて良いのですが、完全にがんの存在が否定されたわけではありません。と言うのは、たまたま、がん細胞に検査用の針が当たらないこともあるからです。実際に初回の針生検が陰性でも再検査を行った場合、一定の割合でがんが検出されることが分かっています。 再検査を行う基準については、はっきりとしているわけではありませんが、初回検査で少し疑わしい細胞が見付かった方や、PSAという前立腺特有のがんマーカーの値が徐々に高くなる方などが対象になります。従って初回の検査で陰性であった方でも、一度がんが疑われた方は、その後も定期的な専門医のフォローが必要になります。
 一方、初回生検あるいは再検査で残念ながらがん細胞が見付かった方は、もちろん治療が必要となるわけですが、その治療方法には、幾つかの種類があります。ということで次回からは前立腺がんの治療方法について一つずつお話しします。


前立腺がん3
 
 さて、これまで2回にわたり前立腺がんについてお話してきました。今回は、その検診について説明します。
 方法としては血液検査で前立腺特異抗原…PSAという、前立腺が産生する特殊なたんぱく質の値を測定します。この結果、異常値を指摘された場合は、すぐに泌尿器科専門医を受診し、精密検査を受けることをお勧めします。
 一般的にはPSAの値が基準値4.0ng/ml(ナノグラム/ミリリッター)以上の方が対象となりますが、50歳代〜60歳代前半の方では3.0ng/ml以上を対象とする施設もあります。ただPSAの値は、がん以外の原因、例えば、前立腺の炎症や前立腺肥大症でも基準値より高い値を示すことがあるため注意が必要です。
 泌尿器科で行う精密検査としては、肛門から指を入れて行う触診(直腸診)や、やはり肛門から超音波の器械を挿入するエコー検査、あるいはMRI検査などを行い、これらの所見も参考にした上で、確定診断のために、最終的には前立腺の組織を採取する検査が必要です。組織の採取には、幾つか方法がありますが、肛門から挿入した超音波装置の画像を見ながら前立腺を専用の針で突いて組織を採取する針生検という方法が最も一般的です。


前立腺がん2
 
 今回は前立腺がんの危険因子についてお話します。前回、わが国では前立腺がん患者さんが増えていると書きましたが、では、前立腺がんになりやすくなる要因、つまり危険因子とは何でしょうか?
 まず一つめに、食生活との関連があります。具体的には動物性脂肪を多く摂取する西洋風の食事様式の増加が、前立腺がんの増加に関連していると言われています。これに対し、豆類・穀物類を多く摂取する人は前立腺がんを発症する確率が低いという報告もあります。
 もう一つは前号でも書きましたが、遺伝的な要因です。ある報告では、第1度近親者、つまり親または兄弟、または子に1人の前立腺がん患者さんがいる場合、その当事者が前立腺がんになる危険率は2倍になると言われています。そして、もしも第1度近親者の中に2人、3人の前立腺がん患者さんがいる場合は、それぞれの危険率は、なんと5倍と11倍になると報告されています。
 このような理由から、近親者にこの病気の方がいる場合は、少なくとも50歳になれば、場合によっては40歳代でも前立腺特異抗原…PSA値(前立腺が産出する特殊なタンパク質の値)を調べる検査をお勧めしています。


前立腺がん1
 
 今回からは前立腺がんについてお話ししたいと思います。
 前立腺とは、男性にのみある臓器で、膀胱の下、尿道を取り囲むように位置し、精液の一部を作る働きをしています。年齢とともに大きくなると、オシッコが出にくくなる前立腺肥大症という病気を引き起こすことで知られていますが、もっと怖いのは、がんができることも珍しくないということです。
 前立腺がんは、もともとは欧米人に多かったのですが、わが国でも最近、急増し、2020年には男性では肺がんに次いで2番目に多いがんになると予想されています。また、その死亡率も2000年の約2・8倍になると推定され非常に重要な病気の一つになっています。
 前立腺がんは、進行が比較的遅いタイプが多く、早い段階で見付かれば根治も可能です。このため、今では多くの自治体で、早期発見のために前立腺がん検診が行われています。検診の方法としては血液検査で前立腺特異抗原…PSAという、前立腺が産生する特殊なたんぱく質の値を測定する方法が一般的です。枚方市でも500円の実費がかかりますが、2007年より50歳以上の男性を対象に前立腺がん検診を実施しています。
 特に肉親の方で、この病気にかかった人がいる場合はがんの発生率が高くなるとされていますので、ぜひ検診を受けることをお勧めします。


性感染症STD 4 HIV感染症
 
 性感染症STDの最後はHIV感染症についてです。ご存じの方も多いと思いますが、HIV(Human Immunodeficiency Virus)とは、後天性免疫不全症候群=AIDS(エイズ)の原因となるウイルスです。同性間を含めた性行為によるものが主な感染経路で、近年、特に2000年代に入り増加し続けています。
 エイズは最近、多くの治療薬が開発され、これまでのような「不治の病」とは言えなくなってきていますが、まだまだ恐ろしい病気です。また、HIVに感染してからエイズを発症するまでの期間が、平均で約10年間と長いため、感染に気付かないうちに周囲に広がり、今後、ますます増加する可能性があります。
 もう一つ、これまでにご紹介しましたクラミジア感染や淋菌感染という、ほかのSTD感染者はHIVにも感染しやすいという事実があります。従ってエイズについては、治療法の開発はもちろんですが、STDの可能性のある人への啓発活動が行政により広く行われており、ちょうど、この6月1日から7日まではエイズ予防財団によるHIV検査普及週間になっています。
 この期間に限らず、全国の保健所で無料・匿名でHIV検査が受けられます。もちろん枚方保健所でもできますので、ご心配な方、心当たりのある方はぜひ、問い合わせてみてください。


性感染症STD 3 淋菌感染症
 
 淋(りん)菌感染症は淋病あるいは淋疾とも言い、前号でお話したクラミジア感染症と並んで性行為感染症STDの代表的な病気の一つです。淋菌は高温や低温に弱く、特殊な環境でしか生存できないため、日常生活で感染することはめったになく、ほとんどが性行為により感染します。主な感染部位は男性では尿道、女性は子宮頸管でクラミジアと共通しており、従って両方に感染していることもまれではありません。また、最近の性行為の多様化により、咽頭(のどの奥)や直腸感染例が増えているとされています。 クラミジアの場合、男女に不顕性感染(感染に気付かない)が多く見られますが、淋菌感染症の場合は、男性に特徴的な症状、つまり、灼熱感を伴う強い排尿痛と、尿道から黄色の膿のような分泌物が見られます。ところが、パートナーである女性では不顕性感染が多く、このようなケースでは男性患者さんを治療しても高い確率で再感染が起こりますので注意が必要です。
 この病気は適切な抗生物質の治療でほぼ100%治癒が可能ですが、淋菌は抗生物質に対し容易に耐性を獲得する、つまり薬が効かなくなるため、現時点で淋菌感染症に推奨されているのは、ほんの3種類の注射薬だけです。さらに、これらの注射薬も感染部位によって効果が違うため、注意が必要です。


性感染症STD 2 クラミジア感染症
 
 性感染症STDについて、最初はクラミジア感染症を取り上げたいと思います。
 というのも、クラミジア感染症はSTDの中で最も多くの感染者がいるとされているからです。その数は全国で100万人以上と推定されており、中でも10代後半から20代前半の女性患者が増えています。
 この病気はクラミジア・トラコマチスという病原菌により、主に性行為によって感染しますが、女性、男性共に半数以上の方が無症状とも言われており、気付かないうちにパートナーへ感染してしまうことが多く見られます。
 1〜3週間の潜伏期間の後、主に男性では尿道炎として発症します。症状としては軽い排尿痛や尿道の不快感が多く、さらさらした分泌物が尿道から出ることもあります。
 女性では子宮頸管炎や卵管炎を引き起こした結果、おりものの増加や腹痛、性交時の痛みなどが見られることがあります。適切な治療を受けずに経過した場合、不妊の原因になったり、妊婦さんでは産道感染の危険もあるという怖い病気です。
 診断は、男性の尿道炎の場合は尿検査だけで可能です。泌尿器科医にご相談ください。女性の場合は、まず産婦人科医に相談することをお勧めします。どちらの場合も、万一、感染が見付かった場合は、パートナーにも検査を受けてもらうことが大切です。


性感染症STD 1
 
 今回からは泌尿器科医が避けて通ることができない病気である性感染症についてお話します。
 性感染症とは名の通り、性行為により感染する病気の総称です。一般的には性病と呼ばれることが多いのですが、ここでは英語表記Sexually Transmitted Diseaseの頭文字を取ってSTDと呼ぶことにします。
 STDには実に多くの病気が含まれますが、法律でその感染動向が調査されるものには、梅毒、HIV感染、性器クラミジア、性器ヘルペス、尖圭コンジローマ、淋菌感染の6つがあります。そのほかにもトリコモナス症、性器カンジダ、毛ジラミなどがあります。お聞きになったことがある病名もあるのではないでしょうか?中には「今時、梅毒や毛ジラミなんて」と思った方もおられるかも知れませんが、しかしそうではありません。確かに、中には減少しているものもありますが、依然として多くの感染例がありますし、HIV感染などのように増加しているものもあります。また、目や口の中といった性器以外の感染が増えていることも問題となっています。STDの怖いところは、きちんと治療しなかった場合、周りにどんどん広がっていく可能性があることです。したがって、正しい知識を持ち、適切な治療を受けなければなりません。次回から、このSTDについて、一つずつ取り上げていきたいと思います。


慢性腎臓病CKD 7
 
 これまでに慢性腎臓病CKDについて6回にわたってお話してきましたが、今回が最後となります。
 これまでの話を簡単にまとめますと、@自覚症状のない予備軍ともいうべき患者さんが多く、新たな国民病として認識されつつあることA喫煙や肥満といった、生活習慣病と関連の深いものが病気を悪化させる原因となることB検診や健康診断で行われる尿検査が診断に重要であることCCKDと診断された場合の治療では禁煙、減塩・低脂肪食、適度の運動といった日常の生活習慣に気を付けることが大事であることなどです。
 これらに加えてCKDが原因で起こる様々な合併症に対しては腎臓専門医による治療が欠かせません。中には、適切な治療にもかかわらず病気が進行し、腎臓移植や人工透析が必要となってしまう方もおられますが、例えば悪性疾患や生まれつきの病気と違って、自分の努力で予防したり、進行を遅らせることが可能な場合があることを知っていただきたいと思います。 ぜひもう一度、生活習慣を見直すとともに、検診や健康診断は必ず受けるようにしましょう。そして検査で異常が見付かった時は、そのままにしないで、できるだけ早く専門医の診察を受けるようにしてください。
 次回からは、やはり最近増加しつつある性行為感染症について、お話しをする予定です。


慢性腎臓病CKD 6
 
 今回も引き続き慢性腎臓病CKDのお話です。
 前回、治療の基本は、生活習慣の改善と食事療法で、特に肥満の解消や禁煙、塩分制限などが重要とお話しました。これらのほかによく聞かれることは「アルコールは一切だめか?」や、「スイミングスクールはやめた方が良いか?」という、飲酒や運動に関する質問です。答えは、「適度な運動やたしなむ程度の飲酒はOK」です。
 日本腎臓学会が作成したCKD診療に関するガイドラインにも、適正飲酒量は男性で一日にエタノール量として20〜30g以下となっています。これは大体、ビールだと中瓶1本、日本酒だと1合くらいです。女性はこの半量と考えてください。ただし、多量の飲酒はCKDを悪化させることも覚えておいてください。
 運動に関しては、以前は運動により蛋白尿が増加したり、血圧が上がったりすることから、否定的な意見もありましたが、これらの変化はいずれも一時的なもので、今では30分程度の中等度の運動は、むしろ推奨されています。
 ここで言う中等度の運動とは、例えば家事全般、早足でのウォーキング、犬の散歩、水中歩行などを指します。もちろん、過労は避けるべきで、ご自分の体力に合わせて無理なく行える範囲が良いでしょう。つまり「適度な運動やたしなむ程度の飲酒はOK」なのです。


慢性腎臓病CKD 5
 
 
 今回は、CKDの治療についてお話します。CKDと診断された場合でも、すぐに腎不全=血液透析が必要になるとは限りません。息切れや倦怠感、体のむくみ、食欲不振といった自覚症状のない軽症の患者さんは、適切な生活指導と治療により、腎不全への進行を遅らせたり食い止めたりすることも可能です。もちろん遺伝性の腎臓病や、腎臓自体の特殊な病気のある方は専門医による特別な治療が必要ですが、一般的なCKD治療の基本は「生活習慣の改善」と「食事療法」になります。
 生活習慣の改善は、肥満や喫煙がCKD発症のリスクファクターとなることから、肥満の解消や禁煙がCKDの治療だけでなく、予防にも有効です。
 また、食事療法の基本は、減塩とタンパク質制限です。CKD患者さんの場合、塩分の過剰摂取は高血圧の発症、あるいは悪化により、さらに腎機能の低下を招くだけでなく、余分な塩分が体にたまることで、むくみや心不全の原因となる可能性もあります。一日の塩分摂取量は6〜8g以下となるように心がけましょう。また、タンパク質制限もCKDの進行を抑制します。ただし、このような食事制限は、ほかの栄養素とのバランスが重要なため、できれば栄養士の指導のもとに行うべきです。
 CKDと診断された方は、一度かかりつけの医師にご相談されることをお勧めします。


慢性腎臓病CKD 4
 
 
さて、今回はCKDの診断についてです。CKDの診断に最も簡単で有効な検査は、検尿による蛋白尿と血尿の確認です。例えば蛋白尿と血尿の両方が陽性の場合や、蛋白尿だけが陽性の場合でもその量が多いほど、腎不全に移行する確率が高いことが分かっています。
 CKDの原因となる病気のうち、かなりの割合を占める糖尿病患者さんや高血圧患者さんは、担当医により、定期的な尿検査が実施されているものと考えますが、健康な方で、例えば児童・学生は学校保健法により行われる学校検診での検尿、すべての勤労者には職場検診、また、その他の一般住民の方には市民検診が実施されるという具合に、わが国では一生涯、何らかの形で検尿検診が行われるシステムになっています。これは、世界に誇れるシステムであり、十分に活用すべきでしょう。
 ただ、尿蛋白は生理的蛋白尿と言って、運動やストレス、あるいは立ち上がっただけでも陽性に出ることがあり、必ずしも病気が潜んでいるわけではないため、注意が必要です。これは血尿(検査では尿潜血陽性と判定されます)についても同じことが言えます。
 一般的には尿蛋 白・尿潜血の両方が陽性の場合や、尿蛋白が2+以上の場合は腎臓内科専門医を、尿潜血のみが1+以上の場合は泌尿器科専門医を受診すべきと考えて良いでしょう。


慢性腎臓病CKD 3
 
 
さて、今回は、慢性腎臓病CKDの原因となる病気についてお話したいと思います。
  CKDの病状が進行した場合、最終的には透析や腎移植を必要とする末期腎不全に至るわけですが、2009年に透析治療を開始した患者さんの元の病気(原疾患と言います)の内訳を見ると、1位が「糖尿病」、以下、「慢性糸球体腎炎」、「腎硬化症」と続いており、これら3つで全体の8割近くを占めています。
 慢性糸球体腎炎とは、糸球体という尿をこし出す部分が障害される純粋な腎臓の病気で、その割合は、学校や職場検診で行なわれる尿検査の普及により早期発見される例が増えたため、減少傾向にありますが、他の2つは逆に増加しています。 腎硬化症とは、高血圧による動脈硬化が原因となり、腎臓が障害される病気です。糖尿病も血糖コントロールが不十分な場合、動脈硬化が進行し、腎障害を引き起こします。
 この他にCKDの危険因子として挙げられるのが、喫煙や加齢、コレステロールなどの脂質異常、肥満などですが、実は、これらはいずれも動脈硬化の危険因子にほかなりません。すなわち、腎臓の動脈硬化がCKDを引き起こすと言っても過言ではありません。したがって、CKD予防のキーワードは、血圧、血糖値、肥満、喫煙、コレステロールなどということになり、これらはまさに、生活習慣病の予防と一致します。


慢性腎臓病CKD 2
 
 
前回に引き続き、慢性腎臓病CKDのお話です。前回、CKDという病気は新たな国民病と言って良いと書きましたが、その理由はいくつかあります。一つは医療費の問題です。平成14年に制定された健康増進法は、受動喫煙の防止や、メタボリックシンドロームに代表される生活習慣病の予防・改善を推進することで「国民が自らの健康状態を自覚すると共に健康の増進に努めなければならない」と、規定していますが、その本来の目的が、増え続ける医療費の抑制にあることは明らかです。 CKDの患者さんが適切な治療を受けなかった場合、最終的には腎不全に至り、人工透析や腎移植を受けざるを得なくなる可能性が高くなります。このことは、今でさえ年間1兆円を軽く超える透析医療費の増加を引き起こすという点で、将来的に大問題となります。
さらにCKDという病気は実は、最終的に末期の腎不全に至り、人工透析を必要とする状態になる前に、脳卒中や心筋梗塞、あるいは心不全といった心血管障害を合併して死亡する患者さんの方が多いのです。
 したがって、単に「慢性の腎臓の病気」ではなく、生活習慣病などと同様に、国全体でその予防・治療に取り組むべきという気運が高まっています。
 次回から、この新たな国民病CKDの病態、診断、治療等を一つずつ取り上げていきたいと思います。


慢性腎臓病CKD 1
 
 
最近、われわれ腎臓の病気に関わる医療従事者の中では、「慢性腎臓病」という言葉がよく使われます。
Chronic(慢性の)Kidney(腎臓)Disease
(病気)という英語の頭文字を取ってCKDと呼んでいます。このCKDの進行した状態を腎不全と呼ぶことになっています。 皆さんは腎不全と聞いてまず何を想像されるでしょうか?人工透析?確かにわが国で人工透析を受けておられる患者さんは年々増えており、現在約29万人にもなっています。
 しかし、人工透析を受けておられる患者さんは、腎臓の機能がほとんどなくなってしまった方ですので、その前段階の患者さんはさらに多くいます。以前は血液検査で腎障害が指摘された時に腎不全と診断していましたが、今では自覚症状が全くなく、また、血液検査で明らかな異常がなくても、例えば持続するタンパク尿があるだけで、CKDと診断されてしまいます。結果、潜在的なCKD患者さんの数は成人人口の約20%を占めるというデータもあります。
ではCKD患者さんはなぜこんなにも多いのでしょうか?その原因として腎臓自体の病気によるものだけなく、糖尿病、高血圧、肥満といった、いわゆる生活習慣病に関連した腎障害や加齢に伴う腎機能低下によるものが増加しているからだと言われており、今や新たな国民病といっても過言ではありません。


副腎の病気4ークッシング症候群ー
 
 副腎の病気の最後はクッシング症候群についてです。これはコルチゾールというホルモンが過剰に分泌されることで引き起こされる病気の総称ですが、その内の約半数は副腎にできた腫瘍が原因となり、副腎性クッシング症候群と呼んでいます。 40〜50歳代の女性に多い病気です。外見上の症状が特徴的で、満月様顔貌、中心性肥満、ニキビ、多毛、皮膚の色素沈着などがあり、このほかに高血圧、月経異常、骨そしょう症、糖尿病、また、不眠やうつ症状といった精神症状など、その臨床症状は多様です。副腎性クッシング症候群の治療は、やはり外科的治療が主体となり、腹腔鏡下副腎摘除術が第一選択となります。
さて、これまで副腎の病気として、「褐色細胞腫」、「原発性アルドステロン症」、そして「クッシング症候群」をご紹介してきました。どれも聞き慣れない病名だとは思いますが、共通点は、3つとも高血圧の原因になり得るということと、手術で治せることが多いという点です。今では副腎の手術はほとんどが侵襲の少ない内視鏡手術で行われるため、入院日数も少なく、体への負担も随分軽くなっています。特に高血圧で治療を受けておられる方は一度、担当の先生とご相談されてみてはいかがでしょうか。
 次回からは、最近色々な意味で注目を集めている慢性腎臓病についてお話したいと思います。


副腎の病気3ー原発性アルドステロン症ー
 
 今回は原発性アルドステロン症についてお話します。この病気は副腎疾患により二次的に起こる高血圧症の代表的なものです。副腎皮質という副腎の外側の部分から、アルドステロンというホルモンが過剰に分泌されることで、難治性の高血圧を引き起こします。30〜50歳代の方に多く、その原因の90%以上は副腎に発生したアルドステロン産生腫瘍と、両側の副腎過形成(副腎の組織が過剰に増殖すること)による特発性アルドステロン症という2つの疾患で占められますが、まれに副腎がんや家族性アルドステロン症という疾患が原因となることもあります。 以前は高血圧症患者さんの0.5%程度の方が、この病気によるものとされてきましたが、診断技術の進歩により、現在では6〜18%程度と、高血圧症の原因として非常に頻度の高い疾患と考えられています。
 この病気の怖いところは難治性の高血圧だけでなく、アルドステロンというホルモンが直接、脳心血管系に悪影響を及ぼし、臓器障害を引き起こすことです。ゆえに早期発見・早期治療が重要となります。治療は高血圧、低カリウム血症の改善とともに脳心血管系合併症の予防が重要であり、そのためにはアルドステロン産生腫瘍に対しては腹腔鏡下副腎摘除術が、また、特発性アルドステロン症に対しては薬物療法が一般に選択されます。


副腎の病気2ー褐色細胞腫ー
 
 副腎の病気には血圧と関連深いものが幾つかあり、「褐色細胞腫」もその一つです。これは副腎の内側、髄質という所にできる腫瘍で、30〜50歳代に多く見られ、高血圧症の原因の約1%を占めると言われています。両側性、悪性腫瘍、副腎外発生、家族性の割合がそれぞれ約10%に見られることから、以前は「10%病」と呼んでいました。
 主な症状は著しい高血圧や頭痛、高血糖、発汗過多、代謝亢進などで、これは腫瘍からカテコラミンという、血管や心臓を収縮させるホルモンが過剰に分泌されることにより引き起こされます。そのほか、動悸や便秘、やせ、胸痛、吐き気、立ちくらみ、視力障害などその症状は多様で、特徴的なことは、半数以上の人はこれらの症状が発作的に現れるということです。発作はお腹の中の腫瘍が圧迫された時に起こりやすく、腹ばいや前かがみといった姿勢、食事、排便時などでも起こり得ます。
 中でも注意が必要なのは発作性の高血圧で、急激に血圧が上がったり、脈が速くなったりして、急性の心不全や脳出血などを引き起こし、生命の危険すら起こることがある、怖い病気と言えます。思い当たる症状のある方は、一度、精密検査を受けた方が良いでしょう。
 良性の褐色細胞腫は外科的切除により、90%以上は治癒可能です。術式は大きな腫瘍を除き、腹腔鏡下手術が普及してきています。


副腎の病気1
 
 これまで腎臓の疾患、特に腎臓の腫瘍についてお話してきましたが、少し、脇道にそれてみたいと思います。
 「泌尿器」とは一体何を意味する言葉かご存知でしょうか?はっきりとした語源は分かりませんが個人的には、これは内分泌器官、腎尿路、前立腺などの(男性)生殖器から来ており、これらの臓器に関連した病気を扱うのがわれわれ泌尿器科医だと思っています。
 この中の内分泌器官とは、体の色々な機能の調節を行うホルモンを分泌する器官で、このうち、泌尿器科で扱うものに副腎があります。副腎は男女を問わず左右一つずつ、腎臓の頭の所に乗っかるようにある臓器で、ここから出されるホルモンは主に4種類あり、中には腎臓を介して、血圧調節や体内のミネラル分の調整などを行うものもあるので、腎臓と関連の深い臓器と言えます。
 あまり聞き慣れない方もおられるようで、患者さんに「…あなたの右の副腎にできものが…」と言っても、「…ん?」という顔をされる方もいらっしゃいます。しかし、この副腎から出されるホルモンを合成したステロイドという薬は、湿疹の時に使う軟膏からリウマチなどの膠原病の治療、アレルギーの治療、さらには臓器移植での拒絶反応の治療
等々、非常に幅広い領域で使用されて、逆に言えば、それだけ重要な臓器だと言えます。そこで次回から、この副腎の病気についてお話したいと思います。


腎がんと鑑別を要する病気2 腎盂(じんう)がん
 
 腎臓には腎がん以外にもがんができます。その代表的なものが腎盂がんです。どちらも腎臓にできる悪性のできもので、紛らわしいのですが、実は全く別の種類なのです。
 腎がんは腎臓の外側、腎実質という尿を作る部分にできるがんで、腎盂がんは腎臓の内側の腎盂という、作られた尿が集まってくる部分にできるがんです。症状としては血尿が最も多く、中には腫瘍による尿の通過障害を起こして腎臓がはれることで、背中の痛みを訴えて見付かることもあります。
 診断には、尿中の悪性細胞の有無を調べる尿細胞診検査や腎盂の造影検査が行われますが、最終的には内視鏡により直接組織を採取して調べる生検という検査で確定します。治療も腎がんとは少し異なります。というのも、腎盂に集まった尿はその後、尿管という細い管を通って膀胱に流れていきます。つまり、腎盂、尿管、膀胱というのは、連続した組織でつながっているため、手術は腎臓だけでなく、尿管と、さらに膀胱の一部まで切除する必要があります。
 手術以外の治療も腎がんの場合は手術で取れない部分に対しては、インターフェロンやインターロイキンという免疫強化薬もしくは分子標的薬という新しい薬を用いますが、腎盂がんの場合は、いわゆる抗がん剤が使われます。しかし、抗がん剤が効かないことも多いため、発見が遅れると、場合によっては腎がんよりも怖い病気と言えます。


腎がんと鑑別を要する病気2 AML
 
 前回に続いて腎がんと間違えやすい病気についてのお話です。
 腎臓にできる腫瘍には良性のものもあり、代表的なものが腎血管筋脂肪腫と呼ばれるものです。この腫瘍は、その名の通り血管と筋肉と脂肪の3つの成分でできており、長い英語名の頭文字を取り、AML(エーエムエル)と呼んでいます。
 腎腫瘍全体に占める割合は1〜2%程度ですが、腎がんと間違えやすい良性疾患の中では、頻度の高いものと言えます。男性より女性に多い病気で(男女比は1対3くらい)、特に結節性硬化症という珍しい病気に合併しやすいことが知られています。
 症状としては血尿や痛みが主ですが、最近は健診などの超音波検査で偶然見付かるケースが増えています。時に腎がんとの鑑別が重要で、CTやMRIといった検査が有用ですが、中には腎がんとの区別がつかず、手術で摘出して初めて診断されることもあります。AMLと診断された場合、小さい腫瘍の場合は経過観察で良いことがほとんどですが、大きいものになると腎臓の外まで広がっていることもあり、注意が必要です。一般には直径4レを超えるものは、腫瘍内部で出血や破裂する危険があるため、腫瘍の血流を遮断する動脈塞栓術(そくせんじゅつ)や部分切除術を行うことが必要です。特に突然破裂した場合は、ショック状態となったり、場合によっては生命の危険まで出てくることもあるため、良性腫瘍とはいえ、専門医による適切な治療が不可欠です。


腎がんと鑑別を要する病気1 腎嚢胞(じんのうほう)
 
 明けましておめでとうございます。今年も引き続き、腎臓の病気について分かりやすくお話させていただこうと思います。よろしくお願い致します。
 さて、今回から腎がんと間違えやすい病気を幾つか取り上げていきたいと思います。例えば健康診断で「腎臓に何かがあるようです。一度、泌尿器科で検査した方が良いでしょう」と言われたらまず何を考えますか?「何かって何?まさかがん?」。でもちょっと待ってください。先月号でも書きましたように、腎臓にできるものの中で怖いのはがんなどの悪性腫瘍ですが、良性の腫瘍や、腫瘍と紛らわしいものが見付かる場合もあります。
 その内の一つが腎嚢胞です。嚢とは袋という意味で、液体のたまった袋状のものを嚢胞と言います。体のあちこちにでき、腎臓にあれば腎嚢胞、肝臓にあれば肝嚢胞と言います。超音波検査で見付かることが多く、通常は無症状で、治療は必要ありません。
 しかし、尿の通り道に近い場合や、10レを超える大きな嚢胞は、尿の流れが邪魔されて腎臓がはれる水腎症を引き起こしたり、おなかを圧迫する症状が出る場合は、中の液体を抜き取る処置が必要です。また、まれに、嚢胞の中にがんが発生することもあるため、注意が必要です。これらの鑑別にはCT検査が有用です。いつでも泌尿器科専門医にご相談ください。


腎臓について3
 
 腎臓にできる腫ようの中で最も要注意なのが腎臓のがん(腎がん)です。がん全体の中で腎がんの占める割合は約2%と、胃がんや肺がんに比べると少ないのですが、近年、増加している病気です。
 以前は発熱、食欲不振、体重減少など、一見、腎臓とは無関係な症状(尿路外症状)や血尿などで見付かるケースが多く、発見時には、既にその半数以上が転移のある進行がんという非常に怖いものでした。
 しかし、最近では患者さんの約8割の方は症状がなく、健診やほかの病気の検査中に偶然見付かっています。このような偶発がんの患者さんの多くは、根治が期待できる早期がんです。超音波検査などで腎臓に異常が指摘された時は、早急に泌尿器科への受診をおすすめします。
 腎がんの治療の基本は手術が第一です。以前は開腹し、腎臓を摘出していましたが、最近ではおなかに数か所の穴を開けて行う腹腔鏡手術が主流で、手術後の痛みが少なく、入院期間の短縮も期待できます。特に、4pまでの小さながんの場合は、腎温存手術と言って、悪い所だけを切り取ることも可能で、私たちも積極的に行っています。
 最後に、腎がんは特殊な遺伝性疾患(腎がんが遺伝しやすい訳ではありませ
ん)や透析を受けておられる患者さんにできやすいのですが、身近な原因としては、肥満や喫煙があります。私も含め、改めて注意したいものです。
 次回は腎がんと間違えやすい腎臓の病気についてお話しする予定です。


腎臓について2
 
 先月号から腎臓についてのお話をさせていただいておりますが、早くも何人かの患者さんから「マイライフ読みましたよ」と言っていただき、改めて反響の大きさに驚いています。気軽に引き受けた連載ですが、「これは下手なことは書けないなあ」と少し緊張しています。
 さて、今回は腎臓の特徴についてもう少し触れたいと思います。腎臓は本来、我慢強い臓器で、「沈黙の臓器」とも呼ばれています。その意味は、少々傷んだくらいでは病気のサイン(つまり自覚症状)を出してくれないということです。しかし、一度、大きな障害が起こってしまうと、なかなか再生してくれないという厄介な臓器でもあります。ですから、腎臓疾患の治療には、早期発見が重要です。
 病気のサインが出にくいと書きましたが、実際には早い段階で尿検査に異常が出ていることが少なくありません。学校検診や健康診断で必ずする検尿の重要性がここにあります。ほかにも肉眼で確認できる尿の異常として、色やにおいがおかしい、量が極端に多い、または少ないなど、いつもと比べて「何か変だな」と感じた時は、そのままにせず、専門医の診察を受けるようにしてください。
 腎臓疾患には腎臓内科医や小児科医が専門とする病気も数多くありますが、次回から主に泌尿器科医が扱う病気についてお話しします。はじめは腎臓の腫瘍についてです。


腎臓について1
 
 今回から、百瀬均院長補佐の後を引き継ぎ、泌尿器関連の話題をお届けする、大山と申します。よろしくお願いします。
 私からは、特に腎臓についてお話をさせていただこうと思います。腎臓は後腹膜腔(胃や腸を包んでいる腹膜の後ろ=背中側)に左右一つずつある臓器です。大きさは10×5レ程度で、重さは一つ130gぐらいです。こんなに小さな臓器ですが、循環血流量(体全体を流れている血液の量。1分間に約5000ml)の1/4〜1/5に相当する血液が流れているという大変重要な臓器です。
 腎臓の機能は大きく二つに分かれます。一つは尿の生成器官であることです。体内に生じた老廃物や有害物質を尿の中に排泄するだけでなく、尿をつくる際に体内の水分量や様々なミネラル(ナトリウムやカリウムなどの電解質)の調整を行うことで体の恒常性を維持しています。もう一つは内分泌器官としての機能です。腎臓は色々なホルモンを分泌することで、血圧の調節や造血などに関与し、また、ビタミンDという、骨の代謝に関連する物質の活性化にも関係しています。
 このように腎臓とは、小さいながらも実に多様な働きをしていて、それゆえに、それらの働きが損なわれると腎不全をはじめ、多くの病気が起こります。そこで次回からは、代表的な腎臓疾患について、一つずつお話していきたいと思います。


心と膀胱のはなし3
 
 6月、7月と「心と膀胱のはなし」と題して心因性頻尿について書いてきましたが、何人かの読者の方から「思い当たることがあります」というお言葉を頂きました。たくさんの方に読んでいただいていることは大変うれしいことなのですが、「少しまずいな」という感覚を覚えたことも事実です。
 というのは、今まで書いてきたように、尿意が心理状態の影響を受けることは極めて正常なことであって、「その度が過ぎて自分自身ではもはや制御できなくなってしまった状態が、心因性頻尿という病気である」ということを、誤って理解されているのではないかと危惧したからです。特に、自分が病気ではないかと考えると、ますます膀胱が気になってしまい、どんどん頻尿が悪化する危険があります。
 膀胱のことがどこまで気になれば異常なのか、という基準などありません。すなわち心因性頻尿という診断に明確な基準は無いわけで、自分で「少し膀胱のことは忘れよか」と思えれば、その瞬間にその方は病気ではなくなるわけです。また逆に、トイレに何回行っても多少足が疲れるだけで、大した実害もありませんし、心理的な頻尿はまず失禁に至ることはありません。要するに、排尿回数など気にしないで、トイレに行きたくなれば行ってやれば良いわけです。
 悟りの境地に達した高僧でもないわれわれにとって、何につけても「気にしない」ということは難しいものです。ここは一つ、面倒な「尿意」を好材料として、悟りを開くことに挑戦してみませんか?


心と膀胱のはなし2
 
 前回、尿意すなわち「トイレに行きたい感じ」が、その時の精神状態や心理状態の影響を強く受けることと、この尿意に心を占領され、何回もトイレに行かないと気が済まなくなってしまう状態が「心因性頻尿」という病気であることを話しました。
 実際に頻尿を訴えて受診される患者さんの中には、「心因性頻尿だな」と思われる方が少なくありませんが、その診断は簡単ではないのです。
 心因性頻尿の診断は、いわゆる除外診断という方法で行われます。除外診断とは聞き慣れない言葉ですが、日常の診療現場ではよく用いられます。 すなわち、何らかの症状を持った患者さんが受診された時に、その症状の原因として考えられる病気について、問診や検査で順番に吟味していき、それらが否定されていく中で否定し得ずに残った病気があれば、それを最終診断とするわけです。 この手法は容易ではなく、あくまで専門家が行うべき方法ですが、実は皆さんがご自分で行い、心因性頻尿についてある程度の目途をつける方法があります。
 その一つは、「尿が近くなる場面」について自分で調べてみることです。頻尿の原因が膀胱や尿道の異常によるものであれば、その異常は時間帯に関係なく存在するはずなので、昼夜を問わず尿が近くなくてはいけません。 心因性頻尿の大きな特徴は、「目が覚めている時には尿が近いのに、睡眠中には異常が見られない」ことです。「心の作用」すなわち、意識が頻尿を引き起こすので、眠っている間は平穏無事なわけですね。


心と膀胱のはなし1
 
 過活動膀胱のシリーズが終わり、今回から新しいシリーズの始まりです。
米国の高名な泌尿器科医師の言葉に、「膀胱は信頼できない証人である」というものがあります。さて、何を意味している言葉でしょう?ここでいう証人とは、「医師が患者さんを診察するに当たって必要な情報」という意味で、膀胱とは膀胱で感じる感覚すなわち「尿意」を意味しています。つまり、「尿意というものは極めて不確かで不安定なものなので、尿意に関する症状を診察するのは大変難しい」ということをぼやいているわけです。 実際に、試験を受ける前や緊張した時に、トイレが近くなることはよく経験されますね。また、映画館で映画が始まるまでは何回もトイレに行きたくなるのに、いざ映画が始まると排尿のことなどすっかり忘れて見入ってしまい、映画が終了して館内が明るくなると急に尿意を催してトイレに駆け込む、ということも珍しくありません。このように、尿意というものは極めて自分勝手な振る舞いをするものなのです。
 試験の例や映画の例で分かるように、尿意すなわち「トイレに行きたい感じ」は、その時の精神状態や心理状態の影響を強く受けます。その時その時の心理状態で、尿が近くなったり遠くなったりすることは、極めて正常なことなので、全く気にする必要はありません。ところが、この尿意に心を占領されてしまい、何回もトイレに行かないと気が済まなくなってしまうことがまれにあります。このような状態を「心因性頻尿」と呼びます。


過活動膀胱について4
 
 今回は過活動膀胱に対する薬物療法についてのお話ですが、最近ではたくさんの薬が開発されています。これらは抗コリン薬という種類の薬で、基本的には膀胱の働きにかかわる自律神経の作用を調整するものです。
 現在わが国では5種類の薬を発売。どの薬も優れた効果が確認されています。一方、副作用についてもほぼ共通しています。多く見られる副作用として「口内乾燥」があります。これは、唾液の分泌が減少するために起こるもので、対策としては飴をなめたりガムをかむなどして唾液の分泌を促す方法が効果的です。特にレモンや梅など酸っぱい味のものがお勧めです。
 「口内乾燥」は、喉が渇く「口渇」とは異なり、水分を取っても解消されません。水分が尿になることで、逆に頻尿の原因となってしまいます。また、便秘気味の人が服用すると、便秘がひどくなる場合があり、注意が必要です。 更に緑内障を持っている人も、服用に際しては注意が必要です。この場合、同じ緑内障でも比較的珍しい「閉塞隅角型」が問題であり、多く見られる「開放隅角型」の場合は問題ありません。かかりつけの眼科の主治医に、自分はどちらの緑内障なのか尋ねてみてください。
 抗コリン薬は過活動膀胱に対しては大変よく効きますが、効果がありすぎると尿が出にくくなったり、残尿が増えてしまう場合があります。特に、前立腺肥大症を持っている男性の場合は注意が必要です。男性の過活動膀胱患者さんには、泌尿器科専門医を受診することをお勧めします。


過活動膀胱について3
 
 今回は、尿意切迫感や頻尿、尿失禁からなる過活動膀胱という状態の治療についてお話します。治療の中心は薬物療法ですが、その前に自分一人でできる工夫があります。
 その一つは、水分摂取に関するものです。尿意切迫感や頻尿は困った症状ですが、特に問題となるのは外出時ではないでしょうか。そこで、あらかじめ予定が分かっている時は、外出数時間前から意識的に水分摂取を控えるようにすることで、外出時の症状が軽減されます。特にお茶やコーヒーなどの利尿作用のある飲み物は、要注意です。
 また、外出ルートが分かっている場合には、駅やデパートなどトイレが使用できる場所をチェックしておき、それらを利用して早めに計画的に排尿すると良いでしょう。最近はコンビニエンスストアでもトイレを借用できますね。更に、膀胱のある下腹部を冷やさないようにすることも、効果的な場合があります。使い捨てカイロを利用しても良いでしょう。
 もう一つ自分でできる治療法として、「膀胱訓練」があります。これは、排尿をできるだけ我慢して、たくさんの尿を膀胱にためる訓練を行う方法です。我慢できずに漏れてしまうと困るので、家に居る時に行うと良いでしょう。また、いつも排尿を我慢すると膀胱炎になってしまう危険があるので、訓練は1日に2回程度にしてください。我慢した後で排尿した時の尿量を計量カップなどで測定して、記録してみてください。
 徐々にためられる量が増えていくことで、効果を知ることができます。


過活動膀胱について2
 
 前回は、尿意切迫感や頻尿、尿失禁からなる過活動膀胱という状態について説明し、多くの方がこのような症状で困っているということを話しました。さて、このような方が医療機関を受診された場合、どのような診療が行われるのでしょうか?
 まずは症状について詳しくお尋ねし、前述の症状以外にもほかの症状がないかを確認します。
 次いで、必要な検査を簡単なものから行って、過活動膀胱であるかどうかを調べます。ここで大変重要なのは、過活動膀胱と同じような症状でも全く別の病気である場合があるので、それらの病気を見逃さないことです。
 その中には色々な病気が含まれますが、多いものは女性の場合の「膀胱炎」や男性の場合の「前立腺炎」などです。
 また、見逃すと大変なことになるものとして昨年末にお話した「慢性尿閉」と「膀胱がん」が挙げられます。これらの病気を調べるために、問診の結果を参考にしながら、まず尿の検査を行って膀胱炎がないかどうかを調べ、男性患者では必要に応じて前立腺の触診を行います。
 また、慢性尿閉の有無は、エコー検査で膀胱が尿でいっぱいになっていないかどうかを調べれば簡単に分かります。膀胱がんに関しては、厳密には内視鏡検査が必要ですが、少しつらい検査なので、まず尿の中にがん細胞が存在しないかどうかを見る「尿細胞診検査」を行います。
 これらの検査でほかの病気が否定されたなら、過活動膀胱としての治療が開始されることになります。次回は治療についての話です。


過活動膀胱について1
 
 今回は過活動膀胱についてお話しましょう。この病名は泌尿器科で扱う色々な病気の中でも、最新の病気で、02年に生まれました。とは言っても、新型インフルエンザのように全く新しい病気の出現ではなく、病気自体は以前からあったのですが、その概念が整理され「過活動膀胱」という名前が付いたのが02年なのです。さて過活動膀胱とは?
 急に尿がしたくなり、我慢ができない状態を尿意切迫感と言いますが、この尿意切迫感で困っている状態が過活動膀胱です。40歳以上の日本人の約12%が尿意切迫感を有し、その内の半数が尿意切迫感に引き続いて尿が漏れてしまうことが分かっています。日常の生活で、突然我慢できないような尿意を催したり、尿が漏れてしまうと大変困りますが、更に悪いことに、過活動膀胱の患者さんの大部分の方が、排尿回数の多い状態「頻尿」を伴っているのです。
 色々な排尿症状の中で、頻尿や尿意切迫感、尿失禁は、特に強く日常生活を障害することが、科学的な調査で明らかになっています。正に、困った症状が重なった状態が過活動膀胱なのです。
 過活動膀胱には多くの原因がありますが、大きく二分できます。一つは、脳卒中や脊髄損傷、パーキンソン病などのために排尿に関係する神経が障害されている場合です。もう一つは明らかな神経障害がない場合で、多くは原因不明ですが、男性では前立腺肥大症が関係していると考えられています。


尿閉について 3
 
 明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願い申し上げます。
 新年早々、シモの話で恐縮ですが、今回は膀胱のポンプ作用が徐々に弱くなる状態の、「慢性尿閉」についての話です。 慢性尿閉の最も怖い点は、徐々に進行するために本人が気付かないことです。毎日少しずつ尿が出にくくなっていても、排尿行為自体は一日に何回も行うことなので、案外
「こんなものかな…」で済ましてしまいます。そして、出にくい状態が進行すると、排尿後に膀胱内に残る残尿の量が増えて、すぐに膀胱がいっぱいになるために排尿回数が増える「頻尿」になります。
 「尿が出にくい」よりも「すぐトイレに行きたくなる」方が困ることが多いので、頻尿になって初めて異常に気付く人が少なくありません。更に病状が進行すると、膀胱がいつも尿でパンパンに張り、あふれた尿が少しずつ尿道から漏れる状態になります。これを「溢流性尿失禁」と言いますが、ここまで放っておくと腎不全になっている可能性が高く、早急に処置をしないと命にかかわることになります。
 すなわち、慢性尿閉は本人が気付かない内に腎不全にまでなり得る、怖い状態なのです。慢性尿閉自体はそんなに多いものではありませんが、「前立腺肥大症」と言われながら治療を受けていない男性や、子宮がんの手術を受けた女性などに見られることがあります。糖尿病の治療をいい加減にしていることも、慢性尿閉になる危険性を高くします。思い当たる方はいらっしゃいませんか?


尿閉について 2
 
 今年も師走を迎えるようになりました。月並みな言葉ですが、本当に一年がたつのは早いですね。
 さて、先月から尿が出ない状態「尿閉」についてお話していますが、今回はもう少し詳しく説明するために、排尿をつかさどっている膀胱の働きからお話しましょう。
 膀胱は二通りの重要な働きをしています。一つは腎臓で作られた尿をためるタンクの働きです。ある程度の量の尿がたまったことを知らせるのが、おしっこをしたくなる感じである「尿意」です。
 もう一つの働きが、たまっている尿を一気に排出するポンプの働きです。タンクの働きが障害されると、十分な量の尿をためることができなくなり、尿が近い、尿が漏れるなどの症状が現れます。一方、ポンプの働きが障害されると、尿の勢いが弱い、力まないと尿が出にくい、排尿してもスッキリしないなどの症状が現れるようになります。
 このように分類すると、先月からお話している尿閉という症状は、尿が出ないわけだからポンプの働きが強く障害された状態だということが理解できますね。前回お話した急性尿閉は、突然ポンプが作動しなくなった状態なので、すぐに気が付くわけです。
 急性尿閉に対して慢性尿閉という言葉があります。これは、徐々に尿が出にくくなっていく状態で、言わばポンプの力が徐々に弱くなる様子を想像してください。慢性尿閉は急性尿閉に比べて気が付きにくく、また腎機能障害につながる危険性を有する点で要注意です。次回に詳しくお話しましょう。


尿閉について 1
 
 朝夕には肌寒く感じるようになってきましたが、皆さんは風邪など引かないで元気にされていることと思います。これから秋、冬と寒くなるにつれて多くなる泌尿器科の病気があります。それが尿閉(にょうへい)です。
 尿閉とはどういう病気でしょう?「尿が閉じる」と書きますが、その通りの意味で、要するに膀胱が尿でいっぱいになっているのに、排尿しようとしても尿が出ない状態を指します。尿閉には、突然に発症する急性尿閉と徐々に進行する慢性尿閉がありますが、今回は急性尿閉についてのお話です。
 急性尿閉の多くは、高齢者の男性に起こります。もともと前立腺肥大症のために多少尿が出にくい人が、何らかのきっかけで全く出なくなるのが典型的なパターンです。
 きっかけとして多いのが、@総合感冒薬の服用A多量の飲酒B長時間の座った状態、などです。これらは、いずれも膀胱の力を弱くしたり、前立腺をうっ血させるために、普段以上に尿が出にくい状態をつくってしまうのです。
 急性尿閉は、膀胱がパンパンに張って大変つらい上に、腎臓を悪くする危険性もあるので早急に治療をする必要があります。尿が出なくなったら、ためらわずに泌尿器科を受診してください。
 これから先は風邪を引きやすくなる季節で、また熱燗がおいしくなる季節でもあります。前立腺肥大症の治療を受けている方は、特に注意してください。風邪気味なのに感冒薬でごまかして、無理をして宴会に出席するような無茶は慎みましょう。


「ピンポン玉」となすび4
 
 色々と工夫されてきた骨盤底弛緩症に対する手術方法の内で、現在最も有効性が期待されるものは、TVMという手術方法です。これは簡単に言うと、骨盤底の弱くなった部分に、合成線維を網目状に編んで作ったメッシュを当てて補強する方法です。 人間の体の弱くなった部分にメッシュを当てる術式は決して新しい発想ではなく、ソケイヘルニア(いわゆる脱腸)に対しては何年も前から行われています。TVMには該当する日本語訳がまだ決まっていないので、その内容を具体的に想像することは難しいと思われます。
 要点だけを述べると、膀胱瘤に対しては、膣の前側の壁を5〜7pほど切開し、膀胱との間を剥離します。次いで足の付け根の辺りの皮膚を1.5p程度左右2か所ずつ切開します。あとは特殊な針と糸を用いてメッシュを膀胱と膣の間に挟むように挿入するだけです。  弱くなった組織ではなくメッシュで膀胱を支えるところが、従来の術式と比べて優れているところです。私自身の経験でも、従来の方法よりも良い結果が得られているように思います。
 膀胱瘤以外の骨盤底弛緩症である直腸瘤や子宮脱の場合も、切開部位や剥離する場所は少し異なりますが、基本的には同じような手技で行います。
 北京オリンピックで卓球の愛ちゃんは、奮闘むなしくメダルに手が届きませんでした。愛ちゃんには次のロンドン目指してこれからも頑張ってもらわなくてはいけませんが、皆さんはこの機会にそろそろピンポン玉にさよならをしませんか?


「ピンポン玉」となすび3
 
 6月、7月と膀胱瘤についてのお話をしてきましたが、おかげ様で何人かの方がこの記事を読んだことをきっかけにして、思い切って私の所を受診してくださいました。女性にとって泌尿器科は受診するのに勇気が要る診療科のようですが、この連載が少しでもお役に立っているのなら、うれしい限りです。
 さて、今月は膀胱瘤の治療についてご紹介します。膀胱瘤に代表される骨盤底弛緩症は、骨盤内の臓器を支えている組織が緩むことに原因があるので、残念ながらお薬で治すことは不可能です。飲むだけで内臓の位置が元に戻るような薬があれば、かえって不気味ですよね。内臓の位置を整えるには、やはり手術を行う必要があります。
 膀胱瘤や子宮脱の手術は、かなり古くから婦人科医、泌尿器科医、外科医などがいろいろな方法を考案してきました。このことは、取りも直さず満足できる優れた術式が無かったことを意味します。確かに、元々弱くなって緩んでしまった組織を使っていろいろと工夫しても、しっかりと臓器を支えるような形を作ることが難しいのは当然ですよね。
 しかし、最近大変優れた良い術式が開発されました。これは、弱くなった部分に合成線維を網目状に編んで作ったメッシュを当てて補強する方法です。しっかりとした物で膀胱を支えるので、従来の術式に比べて優れた治療効果があります。
 次回「ピンポン玉」と「なすび」の話の最終回では、この新しい手術について詳しくお話します。


「ピンポン玉」となすび2
 
 前回は骨盤底の組織が緩くなった結果、膀胱が膣から飛び出す状態を「膀胱瘤」と呼び、多くの方が「ピンポン玉が挟まったような感じがする」と訴えることを話しました。では、「なすび」とは?
 実はこれは、この領域の治療を熱心に行っている親しい女医さんに教えていただいたのですが、彼女の故郷のお年寄りたちは、このようにして飛び出た膀胱を「なすび」と呼んでいるそうなのです。確かに膀胱瘤の患者さんはピンポンという外来語ができる以前から存在したわけだから、純和風(?)の呼び方があってしかるべきですね。
 さて、膀胱瘤をそのまま放っておくと、どうなるのでしょうか。多くの場合、膀胱の飛び出す程度が徐々にひどくなります。やがて、膣の違和感だけでなく、尿が出にくくなったり、飛び出した膣粘膜に慢性的な炎症が生じるなど、体に害を及ぼすようになります。さらに進行すると、腎臓の障害が生じることもあります。
 軽症のうちは膣の不快感だけであることから、年を取れば仕方がない、あるいは当然というあきらめや思い込みの結果、大部分の方がなかなか医療機関を受診されないようです。症状が強くなってからでも、しものことなのでどうしても受診しづらいようですね。
 一方、医療者側も従来はあまり熱心にこの病気に取り組んできませんでした。というのは、この病気を治す良い方法が無かったからなのです。しかし、最近大変優れた方法が開発されました。
 次回は、膀胱瘤の治療についてお話します。


「ピンポン玉」となすび1
 
 今回から新シリーズが始まります。見出しの「ピンポン玉」と「なすび」の話とは、一体何でしょう?
 「骨盤内臓器脱」という病気についての話で、なぜ「ピンポン玉」と「なすび」が出てくるのかは、おいおい説明してまいります。
 「骨盤内臓器脱」とは、高齢女性に多く見られる病気で、簡単に言えば子宮や膀胱が下がってしまう状態を指します。女性の骨盤には前方に膀胱と尿道があり、その後ろに子宮と膣が。最も後ろに直腸があります。若い時の子宮は幾つかの靭帯(強い紐状の組織)で上方へしっかりと引き上げられており、さらにその子宮が膀胱や直腸を引き上げているため、骨盤内の臓器は安定しています。  しかし、妊娠出産や加齢に伴うホルモン状態の変化で、靭帯が弱くなると、安定性が失われて骨盤内の内臓が下がり始めます。肥満が加わると、この状態はひどくなります。
 骨盤内の臓器が下がると最も弱い部分に飛び出しますが、膣がそれに相当します。最も強く下がる臓器も人それぞれです。「骨盤内臓器脱」の中でも、膀胱が強く下がって膣から飛び出した状態を「膀胱瘤」、子宮が下がった状態を「子宮脱」、直腸が下がって膣から飛び出た状態を「直腸瘤」と呼びますが、これらの中で、泌尿器科に直接関係するものは「膀胱瘤」です。
 実は「膀胱瘤」の患者さんは、ご自分の症状を「ピンポン玉のようなものを触れる」とか「ピンポン玉が挟まったような感じがする」と表現されることが多いのです。では、「なすび」とは?それは、次回のお楽しみです。


泌尿器科 電話無料相談
 
 病院の桜もすっかり葉桜になり、少し名残惜しい気もしますが、力強い若葉を見ていると、新しい季節への期待と意欲がわいてきますね。前回まで、夜尿症のお話をしてきました。今回は箸休めの意味で、無料電話相談についてご紹介いたします。
 泌尿器科に関係した病気や症状について、気軽にご相談していただくことを目的として、平成18年7月から3か月に1回程度、泌尿器科電話無料相談を行っています。今までに6回開催しましたが、徐々に相談件数が増えて、最近では1回当たり20件ほどの相談に応じている状態です。
 内容は、尿失禁や排尿困難など排尿に関するものが多いのですが、尿路結石や前立腺癌に関係したものも少なくありません。また、既にほかの医療機関にかかられている方から、意見を求められることもあります。
 当日は診察室に設置した電話の前から離れられないので、結構大変です。弁当と飲み物持参はもちろんのこと、トイレに行くのもままならない状態です。風邪で熱を出してしまい、診察室のベッドでガタガタ震えながら相談に対応した時も。
 しかし、普段の慌ただしい外来診察と異なり、時間を気にすることなく患者さんの話にじっくり耳を傾け、丁寧に説明することができるので、私自身にとっても、電話無料相談は、とても大切な時間になっています。
 次回は5月18日(日)10時〜16時に行なう予定です。本紙5月15日号や病院のホームページでご案内いたします。お気軽にご相談ください。


夜尿症(おねしょ)その5
 
 前回は、真性夜尿には周りの者が辛抱強く待つことが重要と、お話しました。では、なぜ辛抱強く待てば夜尿が治るのでしょう?
 その秘密は真性夜尿の原因にあります。真性夜尿には、A睡眠中の尿量調節が未熟なために生じる「夜間多尿」、B睡眠中の膀胱の安定性が未熟な「夜間膀胱容量減少」、C睡眠中の覚醒反応が未熟な「覚醒障害」の3つの原因が関係しています。
 つまり、睡眠中に多量の尿が産生され、それが容量の小さな膀胱に流れ込むためにすぐに膀胱が満杯になるにもかかわらず、簡単には目が覚めずに、睡眠中に排尿してしまう状態が真性夜尿なのです。
 これら3つの原因には脳の中の共通した部分の未熟性が関係しており、成長に伴ってこの未熟性が改善すると、夜尿も治ってくると考えられています。就寝数時間後と朝方に2回程度夜尿をしていた子が、朝方のみの夜尿になったり、夜中に目が覚めてトイレに行くようになると、夜尿が治りつつある良い兆候です。
 しかし、夜尿が治るには本人の努力も重要です。夕食後の水分摂取を控えたり、就寝前には必ず排尿を済ませることは、夜尿の改善にとって有効です。
 また、いくら睡眠中に尿意のために睡眠が浅くなっても、本人に「夜尿をするまい」という意思がなければ覚醒にまで至らず、結局ふとんの中で排尿をしてしまうでしょう。いずれ治るものだけれど、早く治るに越したことはないので、本人と家族があまり深刻にならないで、明るく楽しく取り組む雰囲気をつくることができれば理想的ですね。


夜尿症(おねしょ)その4
 
 さて今回から、昼間の排尿状態に何ら問題がなく、生まれつきおねしょが続いている「真性夜尿」についてのお話です。真性夜尿の原因は、睡眠中の排尿に関する機能が未熟なことであり、ほとんどの場合は成長とともに治ってしまいます。以前、私の病院に夜尿症で受診した患者の方の追跡調査を行いましたが、15歳までに約80%が、18歳までに約95%が治っていました。
 放っておいても治るので厳密には病気とは言えないのですが、布団や寝間着が汚れてしまう現実問題と、わが子の健全な成長を願うご両親の思いから、何とかならないものかと泌尿器科を受診されるのです。また、小学校などでの宿泊行事を控え、焦って受診されるケースも少なくありません。結論から述べれば、真性夜尿に対する特効薬はなく、最も有効な治療法は子どもの成熟を待つことです。
 以前に述べましたように、私の長男も小学生のころは毎晩おねしょをしていました。しかし、昼間の状況から真性夜尿だと判断できたので、ひたすら辛抱強く待ちました。宿泊行事にもすべて参加しましたが、その場合も替えの下着を持たすこと以外は一切特別なことをせずに送り出すことにしました。とは言ってもやはりかわいい子どものことですから、当然気になります。帰ってきた時に恐る恐る「どうやった?」と聞くと、子どもからは「寝えへんかったから大丈夫や、その代わり帰りのバスが眠くて仕方なかった」との返事。子どもなりに、おねしょをしない方法を考えていたのです。わが子が大きく見えた瞬間でした。


夜尿症(おねしょ)その3
 
 ひと月遅れですが、本年もよろしくお願い致します。
 昨年の続きで「夜尿症」のお話です。
 夜尿症の中でも、昼間にも尿失禁などの異常を伴っている場合には、尿道や膀胱の形の異常や機能障害が潜んでいる可能性があるので、詳しい検査をした方が良いことを前回までにお話しました。 膀胱や尿道の形の異常の中で比較的多いものは、生まれつき尿道の一部が狭くなっている「尿道狭窄」や「尿道弁」という病気で、部位と程度によっては腎臓にまで害が及ぶ可能性があるため、早急に治療を要する場合もあります。治療法は、内視鏡を用いて狭い部分を切り広げる方法が一般的です。
 一方、膀胱や尿道をコントロールする神経の異常が疑われた場合には、神経の異常の原因となっている病気について検索します。可能性の高い病気としては、生まれつき背骨の中の神経に異常がある「潜在性二分脊椎」が挙げられますが、検査を重ねても明らかな病気が見付からないことも、珍しくありません。神経の異常により膀胱や尿道が正しく働いていない場合、本来は原因となる病気に対する治療を優先しますが、必ずしも治療の結果として排尿異常が治る場合ばかりではありません。
 原因治療がうまくいかない場合や原因が明らかでない場合には、膀胱や尿道の状態を正しい状態に近付けるために、薬物療法を行います。現在はこのような目的の良い薬が開発されており、薬物療法の結果、昼間の尿失禁や夜尿が改善することはよく経験されることです。


夜尿症(おねしょ)その2
 
 夜尿症は、まず「生まれてからずっと続いているタイプ」と、「ある時期から夜尿が始まったタイプ」の2つに分けることができます。このうち、後者は心理的な要因がかかわっている可能性があり、問題はかなり複雑となりますので、取りあえず前者のタイプについて話を進めます。
 「生まれてからずっと夜尿が続いているタイプ」では、昼間の排尿に関しても何らかの問題があるかどうかで、2つに分けます。昼間の排尿に関する問題の多くは、「昼間の排尿回数が多い」「トイレに間に合わなくて尿が漏れてしまう」などです。
 通常、昼間の排尿に関しては5歳くらいまでに完成するのが一般的なので、それ以上の年齢で夜尿に加えて何らかの昼間の排尿異常が見られる場合は、その原因となる病気が隠れている可能性を考える必要があります。
 可能性のある病気は、膀胱や尿道の形の異常と膀胱や尿道をコントロールする神経の異常に分けることができます。これらの病気は放置しておくと徐々に症状が重くなるだけでなく、将来腎機能障害を来たす危険性もあるので、積極的に検査を行ってその有無を調べることが必要で、体の診察に加えて、尿検査・膀胱のエコー検査・排尿の勢いと残尿量を調べる検査など患者さんの苦痛が無い検査から始めます。これらの検査で異常が見られた場合には、排尿中の膀胱と尿道の形を調べる検査が必要になります。この検査では細いチューブを尿道に通す必要があるので少し痛みを伴いますが、大変重要な情報を得ることができます。


夜尿症(おねしょ)その1
 
 ようやく秋の気配が感じられるようになりました。夏場はましになっていても、涼しくなるとぶり返してくる病気は少なくありませんが、その一つに夜尿症があります。今回からは、夜尿症すなわち「おねしょ」についてのお話です。
 読者の皆様の中にも、子どものころにおねしょで悩んだ経験をお持ちの方が少なくないのではありませんか?私の父は中学生までおねしょをしていたそうで、息子も小学生のころはよく布団をぬらしました。有名な坂本竜馬も、子どものころはおねしょばかりしていて、近所でも有名だったそうですね。このように、おねしょは決して珍しいものではありませんが、当事者や家族にとっては深刻な問題になることも少なくありません。
 ところで、赤ちゃんがオムツに尿を漏らしても誰もおねしょとは言いませんね。では何歳以上になったら、おねしょと言われるのでしょうか。実はこれに関しては定説がありません。おねしょ自体は肉体的苦痛をもたらすものではなく、命にかかわる病気でもありません。現実的には、子どもが社会生活を始める幼稚園入園や小学校入学の時点で、週の半分以上におねしょが見られる程度であれば、親として気になるところですね。実際、これくらいの年齢で受診されることが多いようです。
 ただし、次回以降で詳しく話しますが、通常子どもが昼間の排尿に関して正常な機能を獲得するのが3〜4歳くらいなので、おねしょ以外に昼間の尿もれがある場合には、もっと早く受診する必要があります。


尿路結石その3
 
 今回は尿路結石症にならないための予防法についてお話します。尿路結石症の中には、明らかな代謝障害やホルモン異常などの病気が原因となっている場合もありますが、大部分は特別な原因がありません。その場合にはどうしたら良いのでしょう。答えは「食事と水分摂取」です。
 水分摂取に関しては、食事以外に1日2000ミリリットル以上の水分を取ることが推奨されています。水分の種類としてはミネラルウォーターやお茶が良いようです。お茶の中でも緑茶や玉露といった高級茶には結石成分であるシュウ酸がたくさん含まれているのであまりおすすめではなく、むしろ麦茶やほうじ茶が良いようです。
 また、そのほかの飲料の中で、ジュース類に関して面白いデータがあります。オレンジジュースやレモンジュースには結石再発予防効果があるクエン酸が多く含まれているのに対して、グレープフルーツジュースやアップルジュースの場合にはむしろ結石形成の危険性が高くなるというものです。同様に炭酸飲料水の過剰摂取も結石形成の危険性が高まるようです。
 結石を経験した患者さんの中にはビールを多く飲むと予防になると信じている方が結構いますが、これは誤りです。大体こういうことを信じている方は、アルコール好きが多いようですね。ビールを飲むと尿量が増えるので尿管結石を自然排石させるのには効果があるかも知れませんが、予防にはなりません。従って、ジョッキを重ねる言い訳にはなら


尿路結石その2
 
 尿管内に結石が詰まり、わき腹や背中が突然痛くなる「疝痛発作」については、前回お話しました。この痛みのつらさは経験者でないと分からないくらい激しく、脂汗がにじみ出て、時には吐き気を催すこともあります。
 痛みに対してはまず消炎鎮痛薬が用いられます。早い効果を期待して内服薬よりも座薬が選択されます。しかし、これだけで痛みが無くなることは少なく、その場合は尿管の痙攣状態を改善させる目的の注射薬やより強い鎮痛効果を持つ注射薬を使います。しかし、なかなか薬の効果が得られず、そうこうしているうちに自然と発作が治まることが少なくありません。
 疝痛発作に対して、安上がりでよく効く治療法が一つあります。それは「指圧法」です。痛い方の背中を、背骨から5センチほど離れた背骨と平行な線に沿って上から下へ順番に押してもらい、最も痛い部位を捜し、親指で5秒間ほど強く指圧してもらうことを3、4回繰り返します。私の経験では、多くの人で随分痛みがましになります。唯一の欠点は、独り住まいの人は使えないことです。私は一度、新幹線の中で疝痛発作を発症した急患をこの方法で治療し、JRから感謝状を頂いたことがあります。
 最後に重要なことを一つ。結石による疝痛発作を経験した人は痛みをすべて結石のせいだと誤解してしまう傾向がありますが、別の重大な病気で似た痛みが生じることもあります。痛みが生じたら、まず医師の診察を受けてください。指圧法は尿管結石の診断がついてから用いてくださいね。


尿路結石その1

  暑くなってきましたが、これから、突然わき腹や背中が痛くなり、脂汗が出るような状態で泌尿器科を受診する方が増えるシーズンです。受診される方の多くが、「尿路結石」という病気で、泌尿器科の救急疾患の中で最も多いものの一つです。
 尿路結石とは、尿の通り道である腎臓、尿管、膀胱、尿道に石ができる病気で、日本人の10人に1人が、一生に一度は経験する病気と言われています。特殊な場合を除いて、尿路結石のほとんどすべては腎臓で尿中の成分が固まって形成されます。これが「腎結石」であり、通常結石が腎臓内に留まっている限り痛みは生じませんが、血尿の原因となることがあります。
 また、腎結石が長期間腎臓内に留まると、腎臓の内腔を鋳型として結石が枝分かれしながら大きく成長します。これを「サンゴ状結石」と呼び、自覚症状はあまりありませんが、腎機能障害の原因となります。多くの場合、腎結石は小さいうちに尿の流れに従って、尿管の中に入り「尿管結石」となります。尿管結石は小さなものであっても尿管を刺激し、その結果尿管がけいれんを起こして、尿管内の尿の流れが止まってしまうことがあります。こうなると腎臓内の内圧が急激に高くなるため、最初に挙げたような症状が出現するのです。この痛みを「疝痛発作」と呼びます。疝痛発作が長時間持続することはまれですが、繰り返すことが多く、本人にとっては大変つらいものです。
 次回は、疝痛発作に対する治療法を中心にお話を進めていきます。


夜間頻尿その6

 
 眠りが浅い↓目が覚める↓トイレに行く、という仕組みで夜間頻尿が生じている人は、結構たくさんいます。当然これらの人は、十分な睡眠が取れれば夜間頻尿も治るわけです。では、十分な睡眠を取るにはどうすれば良いのでしょうか?
 まず、メリハリのある生活をすることです。人間には体内時計という機能があり、これが正しく働けば自然と夜には眠くなります。体内時計を正しく働かせるためには、早起きと規則正しい三度の食事を取ることが大切です。特に、朝起きた時にお日様の光を十分に浴びることが重要で、その結果として夜に脳内で、メラトニンという睡眠誘導物質が産生されるといわれています。
 次に効果的なことは短い昼寝です。午後に軽い昼寝を取ることが、夜の快適な睡眠につながるといわれています。この時、足を少し高くした姿勢で寝ると、以前に述べた夜間多尿にも効果的です。ただしあまり長く昼寝をすると、当然夜に目がさえてしまうので、30分程度でとどめるべきです。
 最後は入浴です。よく「体の芯まで温まる」といいますが、これは睡眠を妨げます。人間が眠る時には体の表面が温かくなりますが、この時内臓の温度はむしろ低めになっているのです。寝る前の入浴で温まり過ぎると内臓の温度が高くなり、睡眠に適さない状態になってしまうのです。入浴は早い時間にするか、寝る前であれば体の表面が温まる程度に済ませましょう。
 「夜間頻尿」については今回で終了。次回からのテーマに、乞うご期待!


夜間頻尿その5

 
 前回は「夜間多尿」の原因と対策について説明し、特に必要以上に水分をたくさん取ることに警鐘を鳴らしました。今回は夜間頻尿のもう一つの原因である「夜間膀胱容量減少」、すなわち「膀胱にあまり尿がたまっていないのに目が覚める」ということについてです。これには二通りの場合があります。 一番目は「少ない尿量で尿意が生じてしまい、その結果目が覚める」場合で、要するに膀胱が過敏になっている状態です。ただし、それには、その原因である何らかの病的状態が存在するはずで、夜間だけ膀胱が敏感になるとは考えにくく、一般には昼間も頻尿が出現するはずです。このように膀胱が過敏になる病気としては、以前にこの欄で解説した「前立腺肥大症」、「過活動膀胱」、「間質性膀胱炎」などがあります。いずれも泌尿器科専門医にとっては、診断法が難しくなく、最近は良い治療法がたくさん開発されています。
 二番目について説明する前に、海外での面白い実験結果をお話しましょう。夜間に1回以上排尿に起きる人たちに、入院の上で全身を詳しく監視した状態で睡眠してもらいました。夜間に目が覚めた原因のほとんどが、自分のいびきや睡眠時無呼吸であったにもかかわらず、なぜ目が覚めたのかという問い掛けに対して、65%の人が「排尿したかったから」と答えました。これは、「たとえ原因が別にあっても、人間は夜間に目覚めた時にはトイレに行く習性がある」ということを示しています。
 次回は、睡眠障害と夜間頻尿の関係についてお話します。


夜間頻尿その4

 前回の内容で、夜間頻尿の原因である「多尿・夜間多尿」と「夜間膀胱容量減少」について、自分で調べる方法をお話ししました。今回からは、いよいよ治療についてです。
「多尿・夜間多尿」を来たす病気の代表的なものに、心臓・肺・腎臓の病気や糖尿病などがあります。既にこれらの病気で治療を受けている方は、治療がうまくいっているかどうか、かかりつけの医師に相談してみてください。 これらの病気がないのに「多尿・夜間多尿」がある人は、一度ご自身が一日の内にどれくらい水分を取っているか調べてみてください。食事時のお茶だけでなく、食間に飲むコーヒーや紅茶、あるいは晩酌などで結構たくさんの水分を取っていることが分かります。たくさんの水分を取れば尿量が増えるのは当然で、特にコーヒー・お茶やアルコールには利尿作用があるので、取った水分量以上の尿を産生します。これらに加えて、最近マスコミでさかんに水分摂取をすすめている状況が「多尿・夜間多尿」に拍車を掛けています。「血液サラサラ」という表現は一見説得力があるように聞こえますが、実は水分をたくさん取ることで脳梗塞や心筋梗塞を予防できるという医学的データはありません。
 人間の体は、体内の水分が不足すればのどが渇いて水分が欲しくなり、水分が多すぎれば尿量が増えて余分な水分を出すようにできています。医師に脳梗塞や心筋梗塞の危険があると言われている人は別にして、通常はのどが渇いた時に欲しい量を飲むだけで十分なのです。


夜間頻尿その3

 今回はいよいよ解析方法です。
 まず、排尿記録の1日分の排尿量をすべて合計して、これをA驍ニします。次に布団に入ってから翌朝起床後、最初の排尿までの排尿回数と排尿量を合計してください。これをB回、C驍ニします。さらに、昼間の1回ずつの排尿の中で、最も排尿量の多いものを見付けてください。これをD驍ニします。最後に、ご自分の体重を調べてください。これをEkgとします。
 さて、計算です。AがE×40より大きいか、あるいは2800より大きい場合は「多尿」といって、1日の尿量が多過ぎる状態です。次に、C÷A×100を計算します。これが30より大きい場合、すなわち1日の尿量の中で夜間尿量が占める割合が30
%より大きい場合が「夜間多尿」です。最後にC÷Dを計算します。これがBより小さい場合が「夜間膀胱容量減少」です。
 つまり、昼間であれば少なくともD驍フ尿を膀胱にためることができるのだから、夜間尿量をDで割った数が、理論上の夜間排尿回数になるはずです。しかも、睡眠中は昼間起きている時よりも膀胱容量が大きくなるのが普通なので、実際の夜間排尿回数はもっと少なくならなくてはいけません。そうならないということは、夜間の膀胱容量が小さくなっていることを意味するわけです。
 以上の解析を3日間行ってみてください。日によって多少の違いはあるかも知れませんが、おおむね同じ傾向を示すものです。
 次回からいよいよ治療についてお話します。


夜間頻尿その2

 今回は「夜中に何回もトイレに起きるのがつらい」という夜間頻尿の原因についてお話しましょう。その前に、排尿の仕組みについて説明します。尿は腎臓で作られ、尿管を通って絶えず膀胱に運ばれます。膀胱にある程度尿がたまると尿意を感じ、排尿します。
 では、夜中にトイレに起きる回数(A回)は、どのような計算式で求められるでしょうか?答えはA=B÷Cです。Bは夜間に腎臓で作られる総尿量で、Cはどの程度尿がたまれば尿意を感じるかという量です。この式でAの値が大きくなる(すなわち夜中にトイレに起きる回数が増える)場合は、どのような場合でしょうか?正解はBが大きくなる場合とCが小さくなる場合の二通りですね。Bが大きいということは、夜間に作られる尿量が多いということで、「夜間多尿」といいます。一方、Cが小さいということは少ない尿量で尿意を感じるということで、言い換えれば「夜間の膀胱容量が小さい」ということです。
 これらの原因を自宅で簡単に調べる方法があります。時計と計量カップか目盛り付きの紙コップを用意してください。朝起きてから、夜布団に入り、翌朝起きるまでの24時間、トイレに行く度に尿をカップで受けて量を測定し、その時刻と、出た尿量を毎回記録してください。これを「排尿記録」と呼び、3日間の記録があれば、夜間頻尿の原因だけでなく、排尿状態に関するさまざまな情報を与えてくれる、大変安上がりで優れた検査方法なのです。 次回はその解析方法について話します。


夜間頻尿その1

 普段の診療において、排尿に関する訴えの中で最も多いものは、「夜中に何回もトイレに起きるのがつらい」というものです。このような症状を専門的には「夜間頻尿」と呼びます。では、夜中に何回くらいトイレに起きると「夜間頻尿」に該当するのでしょうか?
 以前にマイライフ主催の講演会で参加者の皆様に尋ねたところ、多くの方が2回以上というお答えでした。面白いことに、一般開業医の先生方に同じ質問をした際にも、やはり2回以上という答えが最も多かったのです。
 しかし、泌尿器科の専門家の間では、夜間頻尿の定義は、「就寝後朝起きるまでの間に、1回以上排尿に起きなくてはならないという訴え」とされています。すなわちたとえ1回でも、排尿のために起きなくてはならないことが苦痛ならば、それはその人にとって一つの排尿症状であると考えなくてはならないのです。
 実際に、夜間に3回も4回もトイレに起きていても、あまり苦痛に思わない方もいれば、たった1回の排尿が苦になる方もいます。「夜間頻尿」という症状はトイレに行く回数で決まるのではなく、個人個人の苦痛の程度で決まるのです。
 では、「夜間頻尿」はなぜ生じるのでしょうか?その答えを導くためには、まず夜間睡眠中の排尿回数がどのような条件で決まるのか、という根本的なことから考えることが重要です。次回は、夜間頻尿を3つの原因に分けて解説し、さらに皆様が自分自身で簡単にその原因を調べることのできる方法を紹介しましょう。


泌尿器系の疾患を紹介

 明けましておめでとうございます。
 昨年7月にこの連載を開始してから、おかげ様で半年が過ぎました。日常生活に支障を来す事の多い排尿障害の原因となる疾患を中心に、できるだけ分かりやすい表現を用いる事に留意して紹介してきました。 これまでに「前立腺肥大症」「腹圧性尿失禁」「過活動膀胱」「間質性膀胱炎」「血尿」について、お話ししてきました。果たしてうまくお伝えできたのか、いささかの不安は否めませんが、今年も引き続きいろいろな情報をお伝えしますので、何とぞよろしくお願い申し上げます。
 今年は、「夜間頻尿」「尿路結石症」「夜尿症」「神経因性膀胱」「女性性器脱」「高齢者の在宅での排泄管理」などの疾患を取り上げようと思っています。どれも多くの方を悩ませている疾患ですが、一方で病態が十分に解明されておらず、適切な治療法が確立していない事も事実です。
 次回はまず「夜間頻尿」についての話です。「夜中に何度もトイレに起きるのがつらい」という悩みは非常に多くの方が持っており、大規模な疫学調査でも、日常生活を最も強く妨げる排尿症状である事が明らかとなっています。このように「夜間頻尿」は重大な症状であるにもかかわらず、最近まではあまり熱心に研究されてきませんでした。そして、最近の研究で幾つかの新しい事実が発見され、その中で誤った情報や知識によって自ら「夜間頻尿」を作り出している方が少なくない事が分かってきました。何か思わせぶりな書き方になりましたが、ぜひとも次回を楽しみにしておいてください。
 今年が皆様方にとって、健康に恵まれた一年でありますように。

              



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